寝起きだったからーとかそんな言い訳は通用しないと思うから、言ってしまうけど、たぶんね、あのときわたしのなかにはわたしの中のわたしとか、そういう悪魔みたいなものが侵入していたのかもしれないって、それこそ無理がある言い訳かしら?そうかしら?



境界線はいったいどこからだったのかな 


空が、鉛色だ。
放課後、窓際の一番後ろの席でいつのまにか寝入ってしまったわたしが、最初に見たのはまがまがしい黒雲の群れ。動きはとても鋭い。形は白い時と同じ。触ればとても柔らかく指の間をすりぬけるんじゃないかという妄想さえ浮かぶが、真実は毒々しいただの黒雲。微かに空気は冷たくなって、重い。

「……ひどい雨」

雨というものは人間を感傷的にさせる。わたしはゆっくりと上体を起こすと、湿気のおかげで少しパサつく髪を撫で伏せた。ふいに黒板の上にある大きな時計に目をやると、もう夕方を通り過ぎようとしていた。時刻と雨雲が混ざり合ったおかげで室内は不気味なほど暗い。薄ぼんやりとした視界の中で、ぽつり、と窓ガラスに水滴が落ちた。始まった、わたしはそう思って鬱陶しげに乱れた髪の毛を梳かし戻した。そうこうしているうちに、雨粒のベビーは次々へと天から生れ落ち、建物に、地面に、生物に、それからわたしたちにうるさいほど誕生を知らせる。

「お前いったいどれだけ待ってたんだ?」

ぼんやりと窓の外を眺めていたわたしの腕に、唐突にするりと冷たい肌が寄せられて、わたしはゆっくりと振り返った。

「たぶん、2時間ぐらい。でも居眠りしてたから」

もう声で、背後に居るのが誰かはすぐに解ってしまったから、わたしは一度立ち上がり、やんわりと手を伸ばして、キリコの長い髪結わえている黒色の紐をしゅるりと引きぬいた。長く伸ばされた髪の毛は光沢を持つきれいな、白銀色をしている。やけに指通りがよくて、彼の髪の毛はほんとうに情景へうつくしく溶けこんでゆく。よく映えた。

「全く、傘が無いぐらいで俺を呼び出すな」
「ふふ、ごめんね、ごめん。でも来てくれた、ありがとう」


珍しく素直に謝っている自分に、少しだけ驚く。それはキリコも同じのようで、なんだか気味が悪いと眉間に皺を寄せた。わたしはそんな彼を誤魔化すように、ぺったりと彼の濡れたコートに体重を預けた。頬にあたる水と毛の感触が、きもちわるくて、すこしくすぐったくて、わたしはふふと軽く微笑む。

「雨すごいねー。こんなの久し振り」
「ここまで来るのにおかげでずぶ濡れだ」
「ほんと。あれだ、水も滴るなんとやらっていうやつ」
「……お前頭打ったのか?」

素直に微笑んだり、褒めたり、するわたしに対して、キリコは物凄く訝しげに横目でわたしを見つめた。でもわたしはといえば、そんなことにはお構いなしなのである。

ああ、もうそんな眼で見られても、別に企みなんかどこにもないのにそりゃあ、今までこんなことで呼び出したりはしなかったけど、ただの気紛れっていうものなのよそんなに心配そうな顔をしないでくれないかなあ、なんてかわいいんだろう眉間に皺は寄り寄り、ひっどいけどこれはふきげんなかおじゃないのよねわたしにはわかるわたしだけがわかっていることなんだ、なんだ、ちょっといとおしいなあ

なんてことをぐるぐる巡らせてニヤニヤしているのである。ぐふふ…とものすごく可愛げのない含み笑いをすると、キリコは更に困惑した顔付きになっていった。わたしはなんだかもっともっと彼をクエスチョンマークで満たしてやりたくて、少し強引に今までわたしが座っていた木の椅子にキリコを突き飛ばした。

「っ、!!いきなりなに」

ガタアン!と大きな音を立ててキリコは椅子の上に転げた。本当に訳がわからないというように目を丸くしていたのは、ほんの一瞬で、すぐに彼の眼は釣りあがって、わたしに噛みつこうとする。たぶん、そのとき彼は「いきなりなにするんだ」と言いたかったんだろうなあ、と思った。(
それでもってたぶんその科白の後ろには80パーセントの確立で馬鹿娘っていう単語が付属してくるんだ

でももうそれはかなわないので、諦めてもらうしかないなあ、とわたしはゆっくり彼の唇を舐めながら呟いた。キリコにはわたしの言葉の真意さえもわからない。1番最初は言葉をさえぎるぐらい強く押し付けて、それからよく、彼がわたしにするときのように両頬をがっちりと掴んで、触れる程度のキスのシャワーを降らした。逃げられないようにと思って、キリコの脚の間に、わたしのミニスカートから覗く白い脚を押し込んだ。それから肩を抑えてのしかかる。ぐしゅ、と掌にいやな感触が走ったけれど、もうそんなものはどうだっていいと思った。

「やめ、…おいどうした、、おかしいぞお前、…っ!」

くちゅりと粘膜が擦れ合うような音がすると、彼の眼がびくりと見開かれたような気がした。たぶんいつもわたしからは、絶対に舌を入れないから、またこれで彼はひとつ困惑を増やしたのである。わたしはとても楽しくなってしまう。でも、その楽しさもどうせすぐに奪われてしまうんだろうなあ、今はまだいいけれど、足にこの大きな手が伸びたらわたしは一瞬にして捕まえられてしまうんだろうなあ、とわたしはうつろな頭で考えていた。

そうして、まさしく考えがシンクロしたみたいに、太腿にひんやりとした骨張ったものがあたって、それはまるで蛇みたいにずるずるゆっくりと上昇してゆくので、それから、わたしは、それから、
ほんとうにこれは根性で、べろりと彼の首筋を舐めて、足についた掌を無理矢理にでも振り払って、わたしにだってこんな日もあるのよと花のようにうつくしいえがおを見せることが出来て、とりあえず、机の上でのセックスはあとが痛くてたいへんだから、帰ろうか。とやわらかな耳たぶを噛みながら囁くと、たちまち彼の顔色が悪くなって、赤とか青とかいろんな思惑がぐちゃぐちゃになって、わたしはそれをみて、心からかれを、ふりまわすことが生きがいなんだと心から思ったのです。

(あいしているよ)(あいしているよ)(あいしているよ)(あいしているよ)(あいしているよ)(あいしているよ)













すっとんだヒロインが書きたかった。もう病気だというぐらい頭のおかしな支離滅裂の女の子が大好きだ。どこか劣っているものがいとおしい。たぶんこれはそのうちゴミ箱ゆきになります。まあいまのところはふつうに放置ぷれいでね。きりこさんはわけがわからないままでも、ほんのうてきにながされているのですよ。言い訳くせ!うふふ、2日も徹夜をしているとこんなものばかり書き綴っています。きもちわるいでしょ。